キング・オブ・遊具、キング・オブ・ぶらんこ ぼくらの遊具アーカイヴス(其の参)の巻
▲ぶらぶら歩いていたら、最近減っている気がする「4連ぶらんこ」発見(志木市内のとある公園)
▲1本支柱タイプのぶらんこ。サボテンみたいな形だ(武里団地・春日部市)
▲遊具のユニット化が試みられた時のもの。これは、ぶらんこ、砂場、パーゴラがユニット化されている。金属製複合遊具のプロトタイプ的存在(豊四季台団地・柏市)
▲「昭和61年2月設置」のプレートは、しっかりメンテナンスをしているからこその勲章。一体何人の子どもが、このぶらんこで遊んだことだろう(2009年6月撮影)
▲プレーパークならではのぶらんこ。ぶらんこの原型って、きっとこんな感じだったのではなかろうか(片倉うさぎ山プレイパーク・横浜市)
遊具の中の遊具、「キング・オブ・遊具」は何か。
遊具ハンターとしては、オーソドックスなぶらんこを推したいところです。
理由その1、とにかく数が多い。
我が国の公園で一番多く設置されている遊具は、オーソドックスな一方向ぶらんこです。国土交通省の調査結果※1によると、平成20年3月末時点で、都市公園等に設置されている遊具は437,068基、最も多い「踏み板式ぶらんこ」※2が68,033基、次いで多いのが「すべり台」66,303基、「砂場」61,466基、「スプリング遊具」50,216基の順になっています。同調査を実施した都市公園等が129,534 箇所ですから、単純計算で全国の都市公園等の半数に「踏み板式ぶらんこ」があることになります。
- (※1)「都市公園における遊具の安全管理に関する調査」(国土交通省, 平成21年1月)
- (※2)「踏み板式ぶらんこ」は、着座部が「踏み板」タイプのぶらんこの呼び方の一つ。一人用着座部が一方向に揺れ動く、一方向ぶらんこのこと。(2011-09-05 一部追記)
上位3つが多いのは、「街区公園」が「児童公園」と呼ばれていた時期、児童公園を整備する際にぶらんこ・すべり台・砂場の設置が条件づけられていた影響です。こういう事情で、ぶらんこ・すべり台・砂場は、「三点セット」と呼ばれています。「三点セット」については、全国各地の身近な公園が金太郎飴になった原因など、現在も賛否両論いろいろあります。しかし、ユーザーである子ども的には、金太郎飴だろうが何だろうが自分のテリトリー内にある公園が面白いことが重要です。そもそも子どもの脚ではそんなに遠くの公園なんか行けやしませんし(行ったら怒られるし)。という訳で、遊具ハンター的には、現役の子どもからどう評価されているのか、また元・子どもは当時どう評価していたのかが一番気になるところです。
理由その2、基本デザインが変わらない。
近年、支柱が一本や二本のぶらんこ、支柱と梁の部材が一体となったぶらんこなど、新しいデザインのぶらんこが登場していますが、普及しているのは、日本住宅公団、住宅・都市整備公団、都市基盤整備公団の図集に載っていた「2連ぶらんこ」や「4連ぶらんこ」でしょう。図集が初めて登場した1959年(昭和34)※3当時のぶらんこと、現在製造されているオーソドックスなタイプのぶらんこは、梁の高さとぶらんこ柵(侵入防止柵)の設置位置が大きく変わった程度で、基本的な構造は変わっていません。我々が子どもの頃に遊んだぶらんこの中に、塗装や吊り部材等の交換をしつつ今も現役で使用されているものがあるのをみると、良い材料を使っていることもあるのでしょうが、構造的にもデザイン的にも耐久性がある完成度の高いデザインといえましょう。
- (※3)『住宅団地造園施設設計資料集』(日本住宅公団, 1959年(昭和34))
理由その3、誰が使っていても絵になる。
子どもが全力でぶらんこを漕いで遊んでいても、中高生がぶらんこでアイス食べながらおしゃべりしていても、大人がぶらんこで缶コーヒー片手に息抜きしていても、どの光景も絵になると思いませんか。誰が遊んでいても(使っていても)公園の風景に馴染む施設はそう多くはないでしょう。ぶらんこは、子どものものだろうって? ぶらんこの歴史をたどってみると、そうでもないんです。
18世紀中頃のフランスの画家、フラゴナールの有名な作品に「ぶらんこ」があります。木の枝に下げたぶらんこを漕いでいる若い女性と、その女性を斜め下から見上げる絵の依頼主……という構図の、いかにもロココ時代の華やかでフワフワとした空気をまとった一枚です。画題がケーハクと言われようが、依頼主がビミョー過ぎると言われようが、軽やかでウキウキ気分がよく出ていると思います。とにかく、18世紀のフランスでは大人がぶらんこで遊んでいたということです。いろいろ調べてみると、古代ギリシャでも、唐(618-907)でも、春に女性がぶらんこに乗る習俗・行事があったとか云々。高く漕ぐと気分も晴れやかになりますし、本来ぶらんこは黄昏れながら乗るものではないのかもれません。
こうしてみると、ぶらんこは、普及率といいデザインといい歴史といい、「キング・オブ・遊具」にふさわしいといえましょう。
▲「20連ぶらんこ」。こんなぶらんこ、見たことがない。2人乗りすれば、クラス全員で遊べるではないか!!(武庫川団地・西宮市)
さて、今回の一基は、「キング・オブ・遊具」の中のさらにキング、関西を代表する大規模団地、武庫川団地(兵庫県西宮市)のプレイロットにある一方向ぶらんこをご紹介したいと思います。
2年程前、大先輩遊具ハンターから『週刊ダイヤモンド』(2009年9月5日号,特集:ニッポンの団地)に凄いぶらんこの写真が載っていると教えていただき、早速雑誌を買いに行きました。小さなカット写真に写っていたぶらんこは、見慣れたはずの構造でありながらびっくり仰天の「20連ぶらんこ」。いつか現物を見てみたいと思い続けていたところ、昨年末大阪に行く機会があり、ついでに見てくることにしました。
梅田から小豆色の電車に揺られること約15分、武庫川駅で単線に乗り換えて3駅、武庫川団地駅前に到着です。駅を出れば団地がすぐそこに見えます。あとは、例のぶらんこを探すだけ。
一言で表すならば「長っ」。ここまでやり切った感があると、いっそ清々しい。昭和34年版の図集にのみ「8連ぶらんこ」が掲載されているのですが、昭和37年版以降には掲載されていません。設置に必要なスペースや遊びのメニューを考慮すると、標準的なプレイロットでは4連で十分と判断されたのでしょう。そう考えると、この「20連ぶらんこ」には、大規模団地に大勢住んでいる子どもがみんなで遊べる凄いぶらんこを設置しよう、当時の担当者のそんな意気込みが詰まっているように感じます。
「20連ぶらんこ」をよく観察すると、短いスパンの梁から着座部が取り外されて「16連ぶらんこ」になっていました。おそらく安全上の配慮から取り外したのでしょう。まあ、ここまでくれば、「20連ぶらんこ」だろうが「16連ぶらんこ」だろうが、そんなことは些細なことにしか思えません。福知山市に「世界一高いぶらんこ」があるらしいのですが、「世界一大勢で遊べるぶらんこ」または「世界一長いぶらんこ」としてギネスに申請してみてはいかがでしょう、URさん。ぶらんこの長さを競うという発想は、正直ありませんでした。あのぶらんこ、本当にスゴいんだから。なんて言ったって google earth で確認できるんだもん。
文・遊具ハンターかな
(2011-08-10)
▲「20連ぶらんこ」全景。1カットで収めようとすると、どうしてもアングルが限定されてしまう。引いて撮ると何が何だか分からないし、ほんと難しい
▲現在は、短いスパンの梁(1連用の梁)の着座部を外して「16連ぶらんこ」になっている
▲着座部も黄色で統一。下のジャングルジムもそうだが、色に対するこだわりが徹底している。東京近辺では見たことのないタイプの着座部・吊り部材だったので、思わずパチリ
▲初めて見るタイプの吊り部材の取付け方だったので、これもパチリ。ふ〜ん、フックで下げるんじゃないんだ
▲交換したばかりなのだろう、ピカピカの吊り金具。ぶらんこの吊り金具・吊り部材・回転軸は、「消耗部材」なので壊れる前に交換しましょう
▲「20連ぶらんこ」の近くには、スクエアジャングルを連結した豪快なジャングルジムもあった。武庫川団地は、「レインボータウン」と銘打っているらしく、団地全体がレインボーカラーを意識している。という訳でジャングルジムもレインボー。ポップなカラーリングでオブジェみたいだ
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