HOME > シビック通信 > スタッフから

絶滅危惧遊具「円型遊ビ台」ってなんだ? ぼくらの遊具アーカイヴス(其の弐)の巻

団地の案内図

▲とにかく広い

円型遊ビ台

▲絶滅危惧遊具「円型遊ビ台」。見れば見るほど,不思議な形。図集をみると、深さ25cmの砂敷きの中に設置する設計になっていた

藤棚付きの砂場

▲草加松原団地の砂場は幾つかパターンがある。これは、藤棚付きでエレガントな砂場

ユニット化された砂場

▲ユニット化されたコネ台付きの砂場

埼玉県草加市にかつて「東洋一のマンモス団地」呼ばれた大規模団地、草加松原団地があります。

草加松原団地は、日本住宅公団(現在の(独)都市再生機構)が建設、1962年(昭和37)に管理開始された5,926戸、敷地面積48.2haの郊外型の団地です。広い敷地は4つの地区に分けられ、テラスハウスや通称「羊羹型」の中層棟が立ち並び、ところどころに建つポイントハウスでアクセントが付けられています。団地内には小中学校、各地区には商店街や幼稚園・保育所が設けられ、団地の中で生活が完結するようになっていました。現在、全面建替対象団地になっており、A地区から順次建替事業が始まっています。

草加松原団地を歩いてみると、プレイロットの多さに驚かされます。
幼児用として砂場をメインにした小規模のプレイロットが各所に点在しており、自宅近くで子どもを遊ばせることができるようになっています。一方、行動範囲が広がる小学生向けには、広いプレイロットが要所要所に配置されています。児童向けプレイロットは、ボール遊びができる広場からオリジナルの複合遊具が設置されている遊び場までバリエーションがあり、思い切り遊べる環境が用意されています。こうしてプレイロットに着目して大規模団地を歩いてみると、当時団地の主要マーケットであったファミリー層のニーズへの対応や、ニュータウンにコミュニティを形成するため、子どもの遊び場が重要なファクターとして考えられていたことが分かります。

この団地には、建設当初からあったとみられる年代物のコンクリート系遊具があります。その一つ、「円型遊ビ台」が今回の主役です。

カットした巨大バウムクーヘンを積み重ねたような形をしたこのコンクリート系遊具は、プレイロットではなく住棟前の植込みにあります。これが「円型遊ビ台」という遊具だと分かったのは、団地にあるコンクリート系遊具を調べていて『造園工事共通詳細図集』(日本住宅公団, 昭和37年)をチェックしていた時のことでした。図集に掲載されている遊具を一つずつ確認していると、何やら見覚えのあるコンクリート系遊具が載っているではありませんか。「あっ、松原団地のコネ台と同じやつだ」。

他の団地にあるコンクリート系遊具についても確認してみた結果、どうやら団地に残っている「円型遊ビ台」は、草加松原のこの一基だけのようです。これは、建替事業で取り壊される前に記録しなければなりません。それでもって、この遊具のスゴさと多分最後の一基であることを誰かに伝えなければ。デジカメを持って画像を撮りに行き、ついでに携帯電話でパシャリ。その場で友人に画像を送りました。

返ってきたメールは「これ、どうやって遊ぶの?」。
ああ、それはオトナの発想ってやつです。確かに抽象的で見たことのない形状の遊具です。しかし、ここで言葉に窮しているようでは、元・子どもの名が廃る。かつて、この団地に子どもが大勢住んでいた頃、「円型遊ビ台」で遊んでいた子どもが何人、何十人といたことでしょう。そこで、「円型遊ビ台」で何をして遊ぼうか考えました。

1)高鬼。
2)ショーケースに見立てて、お店屋さんごっこ。
3)チョークでその日限りの双六を描いて遊ぶ。
4)泥団子をひたすら作って、何個盛れるか記録づくり。
5)テーブル代わりにして、トランプやカードゲーム。
6)やったことはないけど、メンコ。
7)蛇玉。

これで何をして遊ぼうか考えるところから始まる時点で、ある意味高度な遊具といえます。抽象的な形状故に、遊ぶ本人の「想像力×創造力」が問われている気がします。

「円型遊ビ台」が設置されている草加松原団地の管理開始年と「円型遊ビ台」が唯一掲載されている版の図集の改定が同じ年であることからみても、当時この団地が子どもの遊び場に関する様々な試行と実践の場であり、ここでの実績をもとに各地の団地でプレイロットの整備を展開していったいえます。

どこかに移設しない限り、最後の「円型遊ビ台」もいずれなくなることでしょう。しかし、団地(=住宅地)における子どもの遊び場の機能・役割とは何かを考え抜き、子どもが楽しく遊べる環境を提供しよう奮闘していたオトナの気概は、造園技術者のみならず、全てのオトナがなくしてはいけないものではないでしょうか。願わくば、造園史の記念物として「円型遊ビ台」をどこかの遊び場で動態保存してほしいと思います。遊具って、遊んでナンボのものですから。

文・遊具ウォッチャーハンターかな
(2011-06-10)

複合遊具全景

▲ジャングルジム、「太鼓橋滑り台」のアレンジバージョン、ステンレスすべり台を連結した複合遊具。ここで鬼ごっこをしたら楽しそうだ

SU-T

▲階段と丸鋼の足掛かりで登れるようになっている

複合遊具のジャングルジム部分

▲すべり台の反対側はジャングルジムが付いている

金町駅前団地のPW小型版

▲かつて金町駅前団地にあったというプレイウォールの小型版。穴は、肩をすぼめてやっと通り抜けられた

夜間のせせらぎ

▲迷路風プレイウォール。迷路というだけで、何だか楽しそうな気がするのは何故だろう

夜間の霧噴水

▲パウル・クレーっぽいペイントを施したプレイウォール。色のチョイスがおしゃれだ

カットケーキタイプすべり台

▲カットケーキみたいなワイドタイプのすべり台。このタイプは、今のところ草加松原団地でしか見たことがない

カットケーキタイプすべり台の背面

▲背面は、玉石が埋め込まれている

おばけ

▲赤羽台団地の絶滅危惧遊具「おばけ」。プレイロットの通称は「おばけ公園」。おばけというより、恐竜の骨みたい。ちょっとした抽象芸術風

くらげ

▲赤羽台団地の絶滅危惧遊具「くらげ」。プレイロットの通称は当然「くらげ公園」

プレスカのライオン

▲赤羽台団地の年季の入ったライオンの親子。リアルな造形のプレイスカルプチャーは珍しい。リアル過ぎて、最初犬でもいるのかと思った

石の山三日月型

▲赤羽台団地の三日月型の「石の山」。三日月型は他の団地にもあるようだ


関連ページ
業務実績 | 都市公園における遊具の安全確保に関する検討調査
DEKIコラム | 「遊びの価値」について考える 2004-05-20
DEKIコラム | 遊び場の安全管理について考える 2004-04-21
スタッフから | 「宇宙船」で遊びの世界へ行こう ぼくらの遊具アーカイヴス(其の四)の巻 2012-02-21
スタッフから | キング・オブ・遊具、キング・オブ・ぶらんこ
ぼくらの遊具アーカイヴス(其の参)の巻
2011-08-10
スタッフから | みんな昔はコドモだった! ぼくらの遊具アーカイヴスの巻(石の山編) 2011-04-28
スタッフから | 遊具の安全確保の巻 2003-05-20

▲ PAGE TOP